『古典の効能』
『古典の効能』(寺田真理子 著/林望 監修/雷鳥社)の
ブックデザインを担当しました。
著者の寺田真理子さんは翻訳家であり、心理カウンセラーでもあります。
読書を通じてうつから回復したご自身の体験を体系化した読書療法を
提唱されています。なかでも『枕草子』をはじめとした古典は
読書セラピーにはぴったりなのだそうです。
古典というと学校の授業でしか読んだことがないというひとも
少なくないと思います。わたしもそのひとり。
寺田さんの著書『古典の効能』は、そんなわたしにも古典を
身近に感じさせてくれました。
最初はデザインをする本のことを知るために読んでいたのですが、
次第に「古典の時代に生きた人たちも今を生きる私たちと一緒だし、
地続きなんだ」と思うようになりました。
カバーと章扉は画家の生平桜子さんに描いていただきました。
言葉だけでは説明しきれない古典の魅力を繊細に表現してくださいました。
本のテーマのひとつである「しなやかさ」は造本を考えるうえで大きな
インスピレーションになりました。表紙は芯をなくし仮フランス装
(見返しを貼付けているので正確には違うのですが)の丸背に。
さりげなく光る箔押も気に入っていて、凛とした佇まいのきれいな本になりました。
ぜひ手に取ってその軽やかさを確かめてみてください。
詳しい内容につきましては雷鳥社のHPをご覧ください→◎
『Sunny Side』
鎌倉・由比ヶ浜のギャラリー「BORN FREE WORKS」を営んでいた
小鳥美茂さんの著書『Sunny Side』のブックデザインを担当しました。
表紙を飾るのは杉江篤志さんの写真。BORN FREE WORKSの窓から望む海の碧、
清々しい室内の白、ベランダの壁の黄色。小鳥さんの作ったこの場所の魅力を
隅々までとらえた杉江さんの静かでいてハッとさせられる写真に魅了されました。
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BORN FREE WORKSは終了しますが小鳥さんの活動はこれからも続いていきます。
終わってしまうのはもちろん寂しいことですが、だからこそ過去にリスペクトを
贈りながら次に始まる何かを予感させるようなデザインを心がけました。
この本の制作に関われたことを嬉しく思います。
編集 中岡祐介(三輪舎)
校正 牟田都子
写真 杉江篤志
印刷・製本 株式会社イニュニック
発行者 BEACH BOOK STORE
B6判/並製/112ページ/ガンダレ表紙/PUR無線綴じ
表紙 白箔押し+デボス加工
BEACH BOOK STOREのオンラインショップで販売中です→◎
『Birdsong』&『一色海岸書店』
4月に開催予定だった「BEACH BOOK STORE」展に合わせ小鳥美茂さんの『Birdsong』と小栗誠史さんの『一色海岸書店』のデザインを担当しました。
「BEACH BOOK STORE」展の特設サイトで発売中です→◎
『Birdsong』
(小鳥美茂 著/Kirie Boy 表紙切り絵/Nimo 挿絵/牟田都子 校正)
タイパンツ作家で鎌倉〈BORN FREE WORKS〉を企画・運営する小鳥美茂さんは心がとてもあたかい人で、彼女が綴る素直な文章からも人柄が伝わってきます。『Birdsong』は家族と日々の暮らしがテーマ。家族にも協力してもらい、娘さんのイラストを本文の挿絵に切り絵作家の旦那さんのアートワークを表紙に。それぞれの得意分野で参加してもらいました。そして、小鳥さんの同級生でもある牟田都子さんに校正をお願いし、さらに文章が磨かれていく様と丁寧な仕事ぶりを拝見できたのも嬉しいことのひとつ。
画用紙のような手触りの「アラベール」を使い、1ページ1ページが日々のスケッチのように楽しめる仕様にしました。
A5変型判(180×148mm)/並製/無線綴じ/36ページ
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『一色海岸書店』
(小栗誠史 著/大社優子 写真)
『一色海岸書店』は、小栗誠史さんが美術作家・永井宏さんのワークショップに長年通う中で出会った人々や、永井さんのアトリエで古本屋を開くまでが綴られています。
写真は、写真家の大社優子さんにご提供いただきました。向日葵のように周囲を照らすその人柄のファンも多いと思います、私もその一人。
2011年の初夏、一色海岸書店の様子を捉えた写真があまりにも美しくて、あの場所の空気感が少しでもより伝わるようにレイアウトも工夫しました。
A6判(105×148mm)/並製/無線綴じ/54ページ
優雅な読書が最高の復讐である
山崎まどかさんの書評エッセイ集『優雅な読書が最高の復讐である』
(DU BOOKS)のブックデザインを担当しました。

カバーの題字はNY在住のアーティスト、リアン・シャプトンさん。
(グレタ・ガーウィグ監督「レディ・バード」の題字も担当されています!)
カバーは墨1色でインパクトのある題字が際立つよう真っ白に、
また触れたときに指先がうれしくなるような、テキスタイル風のエンボスが
入っている用紙を選びました。


カバーの力強さとは対照的に、表紙と本文は淡い色調で柔らかさとエレガントさを。
長く愛されることを願ってシンプルな造本を心がけました。
書評エッセイだけでなく、読書日記や岸本佐知子さんとの対談なども収録された
充実の内容で、各エッセイのタイトルを眺めているだけでも興味が掻き立てられます。
視覚的にも愉しくなるよう意識しながら、本文の用紙の色や段組も変えてみました。
詳しい内容、目次などはDU BOOKSのHPをご覧ください→◎